感想 Cloud First Architecture 設計ガイド

「Cloud First Architecture 設計ガイド」という書名は狭すぎる。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」から始まり、ウィトルーウィウスの「建築書」で終わる本書はイノベーションアーキテクチャについての本だ。

エンタープライズのエンジニアにとって、すぐに実適用の対象にならなくても、本書にある「クラウド・ファースト」をはじめとする新しい技術を「横目でよいから、きちんと「これは何に使えるのか?」と見続ける」(本書より)事が重要であり、本書はそのための最適の本であると言える。

記述はIaaS/PaaS/SaaSの実務的な定義から始まり、アジャイル/DevOpsを経てマイクロサービス・アーキテクチャ(MSA),ドメイン駆動開発(DDD)にまで至っており、今、旬のテクノロジーを一通り理解する事が出来る。もちろん、「一通り」であって実務適用にはもう一段、二段の深堀りが必要だが、あふれる情報の中でどこから手をつけたらよいか迷っているエンジニアにとっては格好のガイドとなっている。また,本書ではアーキテクトの仕事についても一通りの説明がなされていて「アーキテクトって何?」と思っているエンジニアには役に立つと思う。(こちらもこれをとっかかりに深堀りが必要なことは当然。)

本書のように最新のテクノロジーの本質と実務との関わりを網羅性とストーリーをもって記載した本は今までなかった。「新しい技術を横目で見続ける」ためには、各人が専門書を読み、勉強会に行き、ネットで情報を得て行くしかない。それは今でも変わらないが、本書はそのための現時点でのガイドとしてはベストだと思う。IoT関連、AI関連など記述が少ない領域もあり、新しい技術やトレンドも出てくるだろうが、それを各人がフォローして行くためのベースとしても本書は有効だろう。

特に、エンタープライズで現在取り扱っている技術がどうも時代遅れなんじゃないの? 雑誌やネットではかっこいい情報がたくさんあるけど全体としてどうなってるの? と思っているエンジニアにはお勧め。参考図書/参考資料はもっと充実してほしかった。

 

Cloud First Architecture 設計ガイド

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