十二国記 白銀の墟 玄の月 1・2巻刊行時点での考察

戴は政が行われないので乱れているという。では,政とは何か? 不十分とはいえ完全な騒乱状態ではなく一応の治安は保たれているようだ。豊かな国であれば,それで民は勝手にうまくやっていくだろうが戴は貧しい国なのでそれだけではすまない。福祉政策,飢饉の時の食糧の放出などが必要なのだろう。では,その食糧はどこから来るのか?

戴は自国の農業生産で自国民すべてを養えないのではないか。従来は玉を輸出しその代金で食糧を輸入していたのではないか。驕王時代の乱採掘で玉資源が枯渇しそれができなくなった。

幸い玉資源は自然回復するが,時間がかかる(10~20年?)。その間は,食糧そのものが不足しているので,たとえ王が変わっても全国民を養うことができない。座して国民が飢えるのを受け入れるしかないが,自らを結果で評価する驍宗にはそのような行動はとれない。常に民を優先する麒麟も同じ。そこで,驍宗麒麟にはしばらく休んでもらって阿選が偽王として泥をかぶる。

阿選も就任当初は被害を最小限にするよう努力したが,しょせん全国民を救うことはできない。むしろ,放置し自由競争させたほうが強い国民が残る? 人口が減少して少しは楽になる? 反対勢力の殲滅も人口減少の効果がある。

こう考えると,琅燦が事態を動かしてはいけないと言ったことも阿選驍宗を選んだのが悪いと言ったことも説明がつく。